組織戦略の考え方(沼上幹)
書籍情報
- 著者:沼上幹(著)
- 発行日:2003-03-10
- ISBN:9784480059963
- URL:https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480059963/
書籍目次
- はじめに
- 第1部 組織の基本
- 第1章 組織設計の基本は官僚制
- 嫌われ者の「官僚制」
- 創造性・戦略性を支える足腰
- 危機管理を考える前に
- 官僚制組織の基本モデル
- ルーチンワークは創造性を駆逐する
- 現場従業員の知的能力アップ ――構造的解決法①
- スタッフの創設 ――構造的解決法②
- 情報技術の装備 ――構造的解決法③
- 事業部制(あるいはより小規模で自律的な組織ユニット) ――構造的解決法④
- 水平関係の創設 ――構造的解決法⑤
- 官僚制の基本骨格は消えない
- 人材育成の基本
- 人の育つ組織設計とは
- カタカナ組織にかぶれるな
- 第2章 ボトルネックへの注目
- 『ザ・ゴール』
- ボトルネックへの注目
- 当たり前だが忘れていた
- 問題はシンプルだった!
- 製品開発プロセスも生産工程だ
- 意思決定のボトルネック
- 長期のボトルネック
- ボトルネックの発想で「教育」を見ると
- 第3章 組織デザインは万能薬ではない
- 「メチャクチャな組織」という批判
- 組織構造自体は何も解決しない
- 代表的な組織構造① ――事業部制・カンパニー制
- 代表的な組織構造② ――職能制
- 代表的な組織構造③ ――マトリクス組織
- マトリクスは何も解決しない
- 組織の機能は「ヒト」次第
- 「悩み」の委譲
- 組織を変えるか、人を替えるか?
- スケープゴートとしての組織構造
- 組織構造が生み出す害悪
- 第4章 欲求階層説の誤用
- マズローの欲求階層説
- 美しく安上がりな「自己実現」
- 欲求階層説への誤解
- 本当は承認・尊厳欲求が大事
- 部下に「勝ち戦」を経験させる
- 「みんな頑張った」という悪平等
- 「縁の下の力持ち」はコトバでたたえる
- カネもポストもないけれど
- 「気高く美しい平等主義」の罠
- 自己実現志向の暴走
- 第1章 組織設計の基本は官僚制
- 第2部 組織の疲労
- 第5章 組織の中のフリーライダー
- フリーライダーとは?
- 労働組合不要論
- フリーライダー問題の視点で見ると
- どうすれば組合員のニーズに無関心な組合を変革できるか?
- 企業組織は常に水の中の足かきが必要
- 厄介者と恐い大人
- フリーライダー問題解決の基本方針
- エリート層の峻別
- 信頼できる中間層をどう確保したらよいか?
- 第6章 決断不足
- 決断
- 「バランス感覚」の落とし穴
- 決断こそ経営者の仕事
- 安泰な時代が創り出す「落としどころ感知器」
- 沈黙の反対
- 威勢ばかりが良い企画
- 経営改革検討プロジェクトの乱立
- 見当違いの人材育成
- まずはトップが決断を
- エースの無駄遣いに注意
- トップが決断できない組織の悲劇
- 第7章 トラの権力、キツネの権力
- 権力=パワーの源泉
- 組織論の常識
- 「厄介者」の権力
- 優等生組織の疲弊
- キツネの権力
- 誰も知らないトラの素顔
- 必要不可欠な調整型リーダー
- 調整型リーダーの真贋
- キツネの権力の予防法
- 調整専門のポストを作らない
- 外圧を利用しない
- 育ちの良い優等生がキツネの温床
- 第8章 奇妙な権力の生まれる瞬間
- スキャンダルの時代
- スキャンダルの基本図式
- 被害者のみのストーリー
- スキャンダルの裏側で権力者が生まれる
- バランス感覚のある宦官
- ウチ向きマネジメント評価の罠
- 奇妙な権力の除去は可能か?
- 第5章 組織の中のフリーライダー
- 第3部 組織の腐り方
- 第9章 組織腐敗のメカニズム
- 会社の寿命は三〇年
- ルールの複雑怪奇化
- ルール運用の厳格化は何をもたらすか?
- 宦官vs武闘派
- 利益を稼ぐ戦士の減少
- 成熟事業部の暇
- 秀才閑居にして無用の仕事を増やす
- 「顧客の声」という罠
- 腐敗の伝染
- 第10章 組織腐敗の診断と処方
- 診断と処方
- 組織腐敗のチェック・ポイント① ――社内手続きと事業分析のバランス
- 組織腐敗のチェック・ポイント② ――スタッフたちのコトバ遊び
- 腐敗からの回復
- 第9章 組織腐敗のメカニズム
- あとがき
- 読書のすすめ
第1章 組織設計の基本は官僚制
しっかりした組織
- 各人が自分で判断できる問題を殆ど自動的にミスなく解決し、判断に迷う問題は即座に上司の判断に委ねるといった一連の作業が確実に遂行できる組織
- 逆に言うと毎度毎度方針検討から入りドタバタしている組織は「しっかりしていない組織」
官僚制の良い面
- (1) 創造性、戦略性を支える足腰
- (2) 効率的かつ信頼性の高いアウトプットを産み出す基礎体力
官僚制の基本モデル
- プログラムとヒエラルキー
6章 組織の腐敗
決断とは
- 決断とは単なる意思決定ではない
- 決断は一部の人々に苦痛を強いたり、社員全員に一時的な苦労を要求したりするものである
決断は批判を生む
- 重大な決断は、簡単な意思決定と異なり必ず激しい議論の的になり、批判する者・称賛する者が発生する
- 決断は多くの人の運命を巻き込むので、必然的に多くの注目を集め、相応に賞賛と罵声を浴びることになる
- [NOTE]
- 仕方のないことである
- 一方、そういう大きな反応が起きると怖気づいてしまう人が多数派なのも事実
- 軍隊では決断を下す立場の人間には特別な教育と待遇で自覚を持たせるけど、日本の企業ではそういうことしてる所は多くなさそう
決断力の不足
- 日本の「民主主義」的教育を受けてきた人々は「独断」を嫌う
- 周りの多数派が暗黙的に考えている「落とし所」を探ろうとしがち(コンセンサスの重視)
- 日本のように会社=コミュニティという側面がある社会ではコンセンサス重視のバランス感覚は必要でもあった
企業は営利組織である
- 企業の主たる側面は世の中にサービスを提供し、その対価を受け取り利益を出すこと
- 利益が出ていることが企業存続の絶対的条件
- 金を稼ぐことを放棄した企業に存在価値はない
落とし所しか考えられない経営者、管理者は不要
- 長期にわたって安泰な状況が続くとコンセンサス重視型の管理者が出世していくようになり、上層部の多数派を占めるようになる
- 安泰な時期には別にそれでも構わないし、むしろメリットもある(社員一丸となって同じ目標に進む的な意味で)
- コンセンサス重視の人間が上層部で多数派になると決断重視型の若手は排除されるようになる
決断力が不足している組織に現れる兆候
- (1) 製品開発プロジェクトでフルライン・フルスペックの仕様が大量に現れる
- フルライン・フルスペックの製品企画や全包囲全面戦争型の戦略計画というものは、何も考えていない・何も決めていない事の証拠(選択と集中が無い)
- (2) 社内で多様な経営改革検討委員会的なものが増える
- 各部門から人を出させて色々検討させるのは経営者が決断できない証拠
- (3) 人材育成に力を入れるようになる
- 現在直面している課題から目を逸らして将来育成されるであろう人材に負債を託そうとする一種の逃げ
対処方
- (1) まずはトップが決断する
- 決断から逃げない
- (2) エース人材を無駄遣いしない
- エース級の人材には重要な仕事のみ担当してもらう
- エース級人材は割と何でもできるので便利使いされがちだが、重要な仕事と決断に集中投入することでより高い成果を生む
- [NOTE]
- そもそも決断ができないからまずいことになってるのに、対処方が決断?
それでも経営者が決断しない時は?
- さっさと転職する
- [NOTE]
- 身も蓋もなくて笑ってしまう