イギリス諜報機関の元スパイが教える 最強の知的武装術―――残酷な時代を乗り切る10のレッスン(デビッド・オマンド)
書籍情報
書籍目次
- プロローグ 知的武装術のレッスンはなぜ必要なのか
- 第1部 スパイ必須のSEES分析 ── 考えを整理するための4つのレッスン
- [レッスン1] 状況認識 ── 知識はつねに断片的で不完全でときに間違っている
- [レッスン2] 事実説明 ── 事実は説明を必要とする
- [レッスン3] 状況予測 ── 予測には十分なデータだけでなく説明モデルが必要
- [レッスン4] 戦略的警告 ── 予期せぬ事態もそれほど驚く必要はない
- 第2部 推論をチェックするための3つのレッスン
- [レッスン5] 認知バイアス
- [レッスン6] 強迫観念
- [レッスン7] 偽情報
- 第3部 情報を賢く活用する3つのレッスン
- [レッスン8] 相手の立場で考える
- [レッスン9] 真の信頼関係を構築する
- [レッスン10] デジタルメディアという“脅威”
- エピローグ 楽天主義における最後の教え
- 巻末注
- 訳者あとがき
プロローグ 知的武装術のレッスンはなぜ必要なのか
SEES分析
- 第1段階: 状況認識
- 第2段階: 事実説明
- 今、目にしているものを何故目にしているか
- 関係者の動機
- 第3段階: 状況予測
- 第4段階: 戦略的警告
SEES分析のプロセスで発生しがちなエラー
- 何が起こっているか評価する難しさから状況認識できなくなってしまう
- 情報ギャップが存在し、新しい証拠を前にしても考えが変わらない
- 他者の動機・育ち・文化・背景に対する理解が浅く、現実に起きていることを説明できない
- 事態が予想外の進展を見せた為、今後の予測が不可能になる
- 視野の狭さと想像力の欠如のせいで今後の可能性に対する戦略の開発ができなくなってしまう
[レッスン1] 状況認識 ── 知識はつねに断片的で不完全でときに間違っている
ベイズ推定
p(N|E) = p(N). [p(E|N) / p(E)]
- SEESの考え方の中心、あらゆる事象に当てはめられる
オシント(オープンソース・インテリジェント)
- 公開されている情報ソースからデータや情報を収集・分析する諜報活動
「状況認識」で重要なこと
- 情報源から十分な情報を得ているかを問う
- 存在する情報の範囲を知る必要があるのに知らないものは何かを理解する
- 情報源の信頼性を評価する
- 時間が許せば結論を下す前に再確認の為の別の情報源を集める
- 新しい情報を得た際はベイズ推定を用いて、今起こっていると考えていることへの信頼度を見直す
- 理解できることには限界があることを公に認め、それによって人々の反応を見る
- 私達を故意に操り、欺き、騙そうとする者がいる可能性を忘れない
[レッスン2] 事実説明 ── 事実は説明を必要とする
投影性同一視のリスク
- 相手を自分と同じ特性を持っていると期待してしまう認知バイアス
人間が自分自身の行動の解釈を見誤る理由
- 自分が望んでいる説明を強化する「事象」を見ようとする(確証バイアス)
同じ情報から正反対の解釈に至ることはよくある
- 「事象」の意味は状況に合わせて推測する必要がある
- 客観的な事実を示していつも感情から生じる期待や不安が反映される
競合仮説分析(ACH)
- CIAの情報分析官であるリチャーズ・J・ホイヤーが提唱
- 西側の情報評価における重要な体系的分析法のひとつ
- 仮説を全て挙げ、どれを選択するかについて全ての証拠、推論、仮定の重要性を検証し、反証が最も少ない説明を有力と見なす
ホイヤーの表
- 競合仮説分析で用いられる証拠を仮説、情報評価のマトリクスで表現したもの
- ↓は書籍の例を再現したもの
- [NOTE] 証拠4の信用度は誤植の可能性あり(改行によって関連性が消えた?)
重要性の評価
- 有利な証拠が最も多い仮説ではなく、不利な証拠が最も少ない仮説を選択することが重要
物事をできるだけ正確に説明するには:
- 事実の選択は中立ではなく特定の説明に偏っているかもしれない
- 事実は自明ではなく、もっともらしい別の説明がつく可能性もある
- 最もありそうな説明を選択する際には、状況が重要である
- 事実の相関関係は直接の因果関係を意味しない
- それぞれの説明を「真実である可能性がある仮説」として扱う
- オッカムのカミソリに従い、単純なものも含めて可能性のある全ての仮説を注意深く設定する
- ベイズ推定を適用し、識別に役立つ証拠を用いて仮説を互いに照らし合わせて検証する
- 別の仮説の検証を如何に無意識に枠組みに嵌め込み、感情的・文化的・歴史的な偏見を抱く危険を犯しているかに注目する
- 不利な証拠が最も少ない仮説が最も真実に近い可能性が高いことを忘れない
- 何が私達の考え方を変えるのかについて、感受性の分析から新しい知見を得る
[レッスン3] 状況予測 ── 予測には十分なデータだけでなく説明モデルが必要
事態の進展を正しく予測できない原因
- 信頼できる因果関係も無いのに上手くいくことを想像して空想的な思考に陥る
イギリスの情報コミュニティで用いられる予測精度の尺度
- 95%以上 → ほぼ確実
- 80-90% → 可能性が大いにある
- 55-75% → 可能性がある
- 40-50% → 現実的に可能性がある
- 25-35% → 可能性は低い
- 10-20% → 可能性は殆ど無い
- 0-5% → 可能性はほぼ無い
アメリカの情報コミュニティで用いられる予測精度の尺度
- 95-99%以上 → ほぼ確実
- 80-95% → 可能性はかなり高い
- 55-80% → 可能性は高い
- 45-55% → 五分五分の確率
- 20-45% → 可能性は低い
- 5-20% → 可能性は極めて低い
- 0-5% → 可能性はほぼ無い
秘密と謎の区別
- 秘密は創意工夫・技術・手段などで見つけることができる
- 謎はそうではない
- 謎は証拠状況が大きく異なり、まだ起こっていない(起こらないかもしれない)出来事に関する懸念
推定と状況予測
- 状況認識からすぐに状況予測をして「帰納的誤謬」に陥るのを避ける為、重要な変数の相互作用を考える為の説明モデルを用いる
- 「どのような予測にも限界がある」という現実を受け入れ、予測した結果を確からしさの度合いと共に示す
- 「可能性がある」などの言葉を使用する時の一貫性に注意し、判断に対する信頼度を確率言語で示す
- (可能性は少ないものの)損害をもたらす可能性があるものについて、最も可能性の高いものと同じように考察する
- フォールス・ポジティブ(False Positive、誤検出)の基準を下げればフォールス・ネガティブ(False Nagtive、見逃し)の増加が予測されることに注意
- 個人または組織の「行動能力」とその「行動意図」を混同しない
- 他者の動機や意図を説明する時には「文化」の違いや「偏見」について注意する
- 情報に基づいた結論と過去の情報・推定・直感(秘密・謎・複雑なもの)をもとに考えたことを区別する
- 他者の動機や意図を理解しようとする時には、判断を曇らせる「先入観」に警戒する
- 自分が思った通りに事態が展開するか、または行動や政策の変更を引き起こそうとして積極的に行われる議論に注意する
[レッスン4] 戦略的警告 ── 予期せぬ事態もそれほど驚く必要はない
[レッスン5] 認知バイアス
[レッスン6] 強迫観念
[レッスン7] 偽情報
[レッスン8] 相手の立場で考える
[レッスン9] 真の信頼関係を構築する
[レッスン10] デジタルメディアという“脅威”
エピローグ 楽天主義における最後の教え