価値判断評価フロー
1. 基本的な主張の整理
論点は何か
要点となる主張は何か
その理由は何か
それらをまとめるとどうなるか
- (1) 何について(論点)
- (2) ○○である(主張)
- (3) その理由は〜(理由)
2. 用語/概念の定義の評価
用語や概念の定義は認識が一致しているか
- 同じ言葉を聞いても解釈が分かれることはよくある
- 同じ言葉であっても想定しているものが全く異なることはよくあるので確認が必要
その定義は一般的なものか
- 独自の解釈/定義を持ち出すことはよくある
- 独自解釈や独自の定義は厳密な議論では避けるべき
- 何らかの理由で独自解釈/定義を前提とした議論をする場合は、事前に定義を確認しておく必要がある(都合が悪くなると定義を変えて誤魔化そうとする場合がある)
定義に対して同意できるか
- そもそも独自解釈や独自定義に同意できないこともある
- 例えば、「1 + 1は100である」と述べられても同意しようがなく、その理論で構築された主張は全て間違っていると考えるべきである
- 定義に同意できない場合、その時点で議論は終了である
3. 主張の評価
曖昧な用語/概念に具体性/定量性はあるか
- 「ちゃんとがんばる」のような標語的な主張はより具体的/定量的な目標に落とし込むことはできるか
- 標語的な主張は如何様にも解釈することができるので、厳密な議論の対象としてはよろしくない
より本質的な結論は何か
- 主張が更に述べたい主張は何か
- つまり、要するに何が言いたいのか
- 「人は肉を食べると不健康になる」という主張がある時、要するに何が言いたいのかと言うと「だから、肉を食べるのは禁止するべきだ」というのが真に主張したいことである
4. 理由(根拠)の評価
そもそも理由はあるか
- そもそも根拠や理由が無いのであれば、その主張が正しいことを証明できない
- 正しいことが証明できないのであれば、それは論ずるに値しないということである
理由になっているか
- 例えば、議論相手の人格否定に終始して議論そのものに言及していない場合(対人論証)、それは理由になっていると見なすことはできない
根拠となる情報は事実か
- 根拠自体が虚偽/誤認であれば、それを前提とした主張全体が成立しない
- 根拠が事実でない主張は論ずるに値しないということである
事実と(意見|感想|信念|願望|信仰)は区別されているか
- 事実と意見(感想)は分けて考えなくてはならない
- 例えば、オカルト系の論者は「これは人間の仕業とは思えない。つまり宇宙人が介入した証拠である」と言うような理由付けをするが、これは意見(または願望)であり事実ではない
根拠となる情報は一次情報かそれ以外か
- 一次情報ではない又聞きの情報は正確性に欠ける為、再検証が必要になる
根拠となる情報は検証可能か
- 検証不可能な根拠を挙げられても、それが正しいかどうかを判断することができない=主張それ自体が正しいかを判断することができない
- 捏造/データ操作を
根拠は論点に関係するか
- 根拠が論点に対して無関係である場合、主張の説得力は無いものと見なされる
- 無関係の理由を持ち出して主張を補強することはできない
- 主張の本質的な部分を強化しない根拠に価値はない
- また、論点そのものが十分に明確になっているかも考慮する必要がある
根拠は一般的に支持されているか
- 根拠が一般的な知識/常識と異なっている場合、その主張は間違っている可能性が高い
- 極稀に全く新しい知見/発見が含まれている場合もあるので即座に断じるのは早計である
データは誰/何が公開しているか
統計情報の場合、データのサンプル数は十分か
分析方法は適切か
何かと比較する場合、比較対象は適切か
根拠となる情報は信頼/信用できるか
- 情報源が示されていても、その情報源が信頼/信用に値しないケースがある(タブロイド紙やプロパガンダメディアなど)
- 情報源の一般的な評価、実績を考慮する必要がある
根拠となる情報が改竄/操作されている可能性はないか
- 疑えばキリがない問題ではあるが、情報源の信頼性/信憑性を考慮して検討する必要がある
都合のいい情報だけピックアップしていないか(確証バイアス)
主張を否定するデータはないか
根拠は普遍性/継続性はあるか
他により妥当な理由はないか
- 疑似相関や偶然の一致である可能性を踏まえて、より合理的に状況を説明できる理由はないか
- その結果、結論(主張)が変わるものはないか
根拠は主張を証明/補強するものか
本当に因果関係があるのか
論点に対して重要な問題か
論理の飛躍は無いか
トートロジーになっていないか
- トートロジーは結局何も言っていないのと同じなので論ずるに値しない
確証バイアス/生存バイアスではないか
権威主義になっていないか
- 「○○大学の教授がそう言っていた」は根拠としては正しいが、それは「○○大学の教授の言うことは全て正しい」わけではない
- 「○○大学の教授」とて専門外の分野ではトンチンカンな発言をすることもあり、肩書や権威とは別に情報の正しさを検証する必要がある
- 肩書や権威の発信する情報を思考停止で受け入れることは権威主義と呼び、これを避けなければならない
内輪にしか通用しない理屈になっていないか
- 特定の思想/信仰集団の中でのみ通用する論理体系というものは存在する
- 特定集団の中でしか通用しない論理体系であることは明示的にしておく必要がある
個別事例を一般論で評価していないか
特殊事例を一般化していないか
- 特殊事例を過大に適用していないか
- ラッキーショット、まぐれ当り、偶然の可能性はないか
一部の事例を全体に当てはめていないか(主語が大きすぎないか)
程度の問題ではないか
判断基準の優先度は同意できるか
5. 前提条件の評価
何かを比較する場合、前提条件は一致しているか
- 前提条件が異なれば結論も異なる
- 意図的に前提条件の違いを無視して自説に有利な結論へ導こうとする論者もいる
前提となる思想/価値観/立ち位置はどのようなものか
- 物事の見方は思想や立ち位置によって変わる
- 論者がどのような思想/立ち位置で語っているかを明らかにする必要がある
- 思想/利害関係/価値観など
- カルト宗教にハマっている者の物の見方はそうでない者のそれとは全く異なる
暗黙的に前提としている概念/考え方/法則は何か
- 結論ありきの論では暗黙的に結論が決まっていて、それに合わせて理論が組み立てられていることがよくある
- 一見筋が通っているように見えても暗黙的な前提として強いバイアスが掛かっている可能性を考慮する
そもそもの前提が間違っている可能性はないか
- 前提そのものが誤りである場合、主張の正当性は失われることになる
6. 思想/立場/価値観の評価
別の思想/立場/価値観で考えた時、何が妥当か
複数の思想/立場/価値観がある時、どれを選択するか
自分が選択する思想/立場/価値観の利点/欠点は何か
参考資料