単一責務原則

1. 原則

クラスの責務は1つであること

• クラスが受け持つ責務はたった1つでなければならない
• クラスが受け持つ責務とは、クラス（とそのロジック）を利用する者（アクター）へ提供する機能のことである
• 複数の責務を持つクラスを作ってはならず、そのようなクラスになってしまった場合は単一責務になるようクラスを分割する

2. 根拠

責務の拡大と共にコードが複雑化する

• 複数の責務を持つクラスは仕様変更に伴う責務の増加や拡大を受け入れることになる
• クラスが担う責務が増加すれば、コードは複雑化しバグは増え保守性も低下するので良いことがない

3. 指針

• 1つのクラスの責務は1つだけに限定する
• 複数の責務がある場合は別のクラスに分離する

4. 注意事項

「単一責任 == 単一メソッド」ではない

• クラスの責務が単一になることとメソッドが1つだけになることは関係ない（結果的にそうなることもある）
• 例えば、あるデータの操作が責務であるなら「参照」と「変更」は必要になる
• クラスの正常な挙動に対する責務

参考資料

• アジャイルソフトウェア開発の奥義 第2版
• 単一責任原則 | プログラマが知るべき97のこと
• 単一責任の原則(SRP)についての見解と方法論 - FLINTERS Engineer's Blog
• 単一責任原則で無責任な多目的クラスを爆殺する - Qiita
• 【本には書いてないオブジェクト指向⑥】リンゴ一個とリンゴ一山は異なるクラス | そるでぶろぐ

Appendix-1 NG事例

役割が複数種類ある事例

• 以下のコードは1つのクラスがCSV、TSV、JSONの読み込み機能を持っているものである
• クラスが「CSV、TSV、JSONの読み込み」の役割（責務）を持っており、単一責務原則に違反している
• 「CSVが欲しいアクター」「TSVが欲しいアクター」「JSONが欲しいアクター」それぞれに対する責務を1つのクラスが担っている状態である

class DataLoader:
    def csv_load(file_path):
        # CSVファイルをロードして返却する

    def tsv_load(file_path):
        # TSVファイルをロードして返却する

    def json_load(file_path):
        # JSONファイルをロードして返却する

• このようなクラスはメソッド毎にクラスへ分割し、同じインターフェイスを実装するようにする
• ついでにファクトリークラス経由でインスタンスを取得するようにしておけば、利用者側からはインターフェイス（とファクトリー）しか見えないようにできる

from abc import ABCMeta, abstractmethod

class DataLoader(metaclass=ABCMeta):
    @abstractmethod
    def load(file_path):
        pass

class CsvDataLoader(DataLoader):
    def load(file_path):
        # CSVファイルをロードして返却する
        ...

class TsvDataLoader(DataLoader):
    def load(file_path):
        # TSVファイルをロードして返却する
        ...

class JsonDataLoader(DataLoader):
    def load(file_path):
        # JSONファイルをロードして返却する
        ...

class Factory:
    @staticmethod
    def createCsvDataLoader():
        return CsvDataLoader()

    @staticmethod
    def createTsvDataLoader():
        return TsvDataLoader()

    @staticmethod
    def createJsonDataLoader():
        return JsonDataLoader()

if __name__=="__main__":
    loader1 = Factory.createCsvDataLoader()
    print(loader1.load())  # CSVが出力される

    loader2 = Factory.createTsvDataLoader()
    print(loader2.load())  # TSVが出力される

    loader3 = Factory.createJsonDataLoader()
    print(loader3.load())  # JSONが出力される