本質を見抜く「考え方」 (中西輝政)
書籍情報
- 著者:中西輝政(著)
- 発行日:2011-07-20
- ISBN:9784763160003
- URL:https://www.sunmark.co.jp/detail.php?csid=6000-3
書籍目次
- まえがき
- 第1章 考え始める技術
- 考え方01 「自分」とは何か
- 考え方02 「敵」をはっきりさせる
- 考え方03 「宙ぶらりん」に耐えること
- 考え方04 必ず「言葉」にしてみる
- 考え方05 自分なりの「仮説」を立てる
- 考え方06 とにかく一度「結論」を出す
- 考え方07 最初に得た「直感」を思い返す
- 考え方08 むずかしい話を「やさしく」言い直す
- 考え方09 「行動しながら」考える
- 考え方10 「動あれば反動あり」
- 考え方11 「3つのセオリー」を当てはめてみる
- 考え方12 問題を「3つの要素」に分ける
- 考え方13 「答え」より「考え方」の重要性を知る
- 第2章 考えを深める技術
- 考え方14 「民意」もあやまつ
- 考え方15 自分の頭の「ルーツ」を知る
- 考え方16 どんな情報も「歴史」に還元する
- 考え方17 問題の「外に」出てみる
- 考え方18 「よき異端」をめざす
- 考え方19 おもしろいと「感じる」ほうを選ぶ
- 考え方20 「逆説」を愛する心を持つ
- 考え方21 「迷い」は将来への投資ととらえる
- 考え方22 「粘り」と「潔さ」の両面を持つ
- 第3章 間違いを減らす技術
- 考え方23 「択一」により「共存」を意識する
- 考え方24 論理は「保険」と心得る
- 考え方25 「自分に都合のいい論理」を調達しない
- 考え方26 「正しいこと」と「効率のよさ」を混同しない
- 考え方27 「効率」と「精神」のバランスをとる
- 考え方28 効率を「量」ではなく「質」でとらえる
- 考え方29 「近代の終わり」を意識する
- 第4章 世の中を考える技術
- 考え方30 国単位ではなく「文明単位」で見る
- 考え方31 「どん底」から復活を考える
- 考え方32 世と人とは元来「うまくいかない」もの
- 考え方33 評価ではなく「事実」だけを見る
- 考え方34 「本分」を貫くことで社会貢献を考える
- 考え方35 天下国家も「自分の問題」としてとらえる
- 考え方36 国を知るには、まず「神話」を知ること
- 考え方37 日欧のエリートを「同じ土俵」に置かない
- 考え方38 「政府」と「国民」の違いを知る
- 第5章 疑問を抱く技術
- 考え方39 ふと浮かんだ「疑問」を封じ込めない
- 考え方40 誰も疑わない「美しい言葉」こそ疑ってみる
- 考え方41 数字や論理の「正しさ」に惑わされない
- 考え方42 「先に結論ありき」の議論に注意する
- 考え方43 「早く」見つけ、「遅く」行動する
- 考え方44 「全員一致」は、まず間違いと心得る
- 第6章 情報を考える技術
- 考え方45 変化を見るまえに「不変」を見る
- 考え方46 バラバラの「事実と数字」を見つめ直す
- 考え方47 「自分の絵」にして精度を高める
- 考え方48 「目的意識」を明確にする
- 考え方49 チェックには「別の頭」を使う
- 考え方50 危機は、まず「人心の変化」に現れる
- 考え方51 「予兆」を感じるアンテナを磨いておく
- 考え方52 「30年以上先」は、現在の延長で考えない
- 考え方53 「日本人」を明確に意識する
第1章 考え始める技術
考え方01 「自分」とは何か
- 自分を写す鏡が歪んでいると、全てが歪んで見える
- グローバル社会でこそ「日本とは」「日本人とは」「自分とは」という自己認識が必要
- 自画像、自己認識が曖昧なままでは国際社会の問題を考えることはできない
考え方02 「敵」をはっきりさせる
- 平和は大事だが全ての国と等しく付き合うことはできない
- 敵を知ることは己を知ることになる
- 敵に備えることで自分に欠けているものや弱みがはっきりする
- 脅威やリスクを見て見ぬ振りをし、対立を避け、誰とでも仲良くしようとするのは「滅びの哲学」でしかない
考え方03 「宙ぶらりん」に耐えること
- 人間は答えの出ないことに耐えるのが難しい生き物
- しかし、早まった結論はハイリスク
- 正しく判断する為に「宙ぶらりん」の状態に耐える訓練が必要
考え方04 必ず「言葉」にしてみる
- 「何となく」表現しているだけでは思考の道筋が明確にならない
- 「自分の言葉」を持たないこと = 言葉の貧弱さ
- [MEMO]
- うーん??
考え方05 自分なりの「仮説」を立てる
- 「定限命題」にすることでフワフワした思考に輪郭を与えることができる
- 「定限命題」とは「〜は〜である」「〜は〜ではない」と言った言い切りの形式
- まずは言い切ることで考えを明確化する
- わからない事でも仮説として言い切る
考え方06 とにかく一度「結論」を出す
- 仮説として結論を出し、それをアウトプットしておくと、後から見返して自分の結論の妥当性、考え方のクセを評価できる
- [MEMO]
- アウトプット重要というやつである
考え方07 最初に得た「直感」を思い返す
- 直感は思考過程をスキップして出力されるもので、ものごとの本質であることも多い
考え方08 むずかしい話を「やさしく」言い直す
- T/O
考え方09 「行動しながら」考える
- 動いてみると今まで気付かなかった問題点を発見しやすい
- 沈思黙考は「下手の考え休むに似たり」になりやすい
- 「考える」という文脈においては、行動とは言葉にすること
考え方10 「動あれば反動あり」
- ひとつの動きがある時は、その「反作用」とでも言うべき逆の動きが必ず起きる
- 物事には必ず裏があるので、逆方向から眺めてみることが大事
考え方11 「3つのセオリー」を当てはめてみる
- 3つのセオリー:
- (1) 動あれば反動あり:
- 何かの動きには必ず逆の動きが起きる
- (2) 慣性の法則:
- 大きな質量(比喩)が動く時は簡単には止まらず慣性で動き続けるもの
- 巨大なプロジェクトは簡単には止めることができないという話
- (3) 鹿威し:
- 溜まった水がある一点を超えた時に全て転換が起きる
- 負債や歪みが溜まってある時、一斉に状況が反転するというような
- (1) 動あれば反動あり:
考え方12 問題を「3つの要素」に分ける
- 多少無理矢理にでも3つに分けるとなんか分かりやすくなるという話
考え方13 「答え」より「考え方」の重要性を知る
- 答えだけを求めても考える力は身に付かない
- 問題に直面したらまずは自分の頭で考える習慣を身に付けるべき
第2章 考えを深める技術
考え方14 「民意」もあやまつ
- 自分含む、大多数の一般的な意見に流されると判断を謝る
- 多数派を「錦の御旗」にした時、政治は乱れる
- 思考停止した意思決定は後悔が多くなる
- 民意は所詮素人の意見の集合であり、派手に間違えることがある
- 衆愚に注意が必要
- 民意絶対主義は危険であり誤り
- [MEMO]
- 特に異論は無いが、「民意」を無視・退けた意思決定をした場合の事後評価・責任追及はどうするべきだろうか?
考え方15 自分の頭の「ルーツ」を知る
- 自分が好きだったものの中に自分の考えの原点がある
- 自分の頭で考える以上、自分の頭の素地やルーツが見識や考え方に影響を与えることは自覚しておかなくてはならない
考え方16 どんな情報も「歴史」に還元する
- 1つの時代しか見ていないと考えの妥当性が分からない
- 歴史は常に繰り返されるものなので、過去の歴史に学ぶことが物事の真偽を判断することに役立つ
考え方17 問題の「外に」出てみる
- 問題を考える時、自分の立場に立って考えてばかりでは新しい視点は生まれない
- 問題の中から一歩出て、客観的に問題を見ることで様々な視点からの考え方が生まれてくる
- 他人が自分を見ている視線を学ぶことは二倍の収穫をもたらす
- 自分の立場で考えるだけでは新しい視点や考えも生まれない
- 当面の問題の中からあえて一歩出て、外に立って大局的にもう一度問題を眺めてみることも大事
考え方18 「よき異端」をめざす
- あえて異端の考えを取り入れることで考えに深みが出る
- 逆に自分の考えが「主流」に近いだけで正しいと思うのは錯覚
- そのような錯覚に陥らないよう考えを反芻する習慣を付ける
- 異端の哲学:
- 「自分の考えは本当に正しいのだろうか」という不安を持つからこそ、常に自分の考えを反芻し検証すること
- 欧米人の精神の二重構造:
- 欧米人は内心では絶対に実現しないと思っていることでも、口では理想論を熱く語る習性がある
- [MEMO] 上っ面だけでも理想を説かないと不道徳だというキリスト教由来の価値観がそうさせるのだろうか
考え方19 おもしろいと「感じる」ほうを選ぶ
- 様々な紆余曲折があっても、本来の自分の完成は常に正しい判断を下す
- 周りに囚われず、自分自身を見つめる「目」を大切にする
- 進むべき道に迷ったら「自分が面白い」と感じる方を選ぶ
考え方20 「逆説」を愛する心を持つ
- 逆説=パラドックス
- 一見無秩序で不可解な世界に立ち向かってこそ考える力が養われる
- パラドックスを受け容れると深い真理に行き着く
考え方21 「迷い」は将来への投資ととらえる
- 人間は自分の中に2つの「相反するもの」を持ち、常に自分に問い掛ける部分を持たなくてはならない
- その中で、悩み、惑い、試行錯誤することが考えを広げ深める訓練になる
考え方22 「粘り」と「潔さ」の両面を持つ
- 相反する要素を併せ持つことで「悩む」や「宙ぶらりん」の状態を楽しむ境地が拓けてくる
考え方23 「択一」により「共存」を意識する
- 対立価値の扱いは、どちらか一方を「択一」してはいけない
- 「択一」な結論は性急な結論であり、大抵間違っている
- 「択一」の選択より「共存」を選ぶべき
考え方24 論理は「保険」と心得る
- 普段は直感で決めてもよい
- しかし、リスクが大きな問題は論理をチェックリストとして用いる
- [MEMO]
- 日本人は脳死で動ける場合は強いが、論理が必要な局面では弱い
考え方25 「自分に都合のいい論理」を調達しない
- 日本人は自分に都合のいい論理を選びがち
- 日本人が大きな失敗をするのはこういう時
- 自分に都合のよい論理で自己洗脳していないかセルフチェックすることが重要
- [MEMO]
- 確証バイアスや希望的観測に固執すると失敗するぞという話
考え方26 「正しいこと」と「効率のよさ」を混同しない
- 正しいことと効率の良さは相反する
- 「正しいこと」と「効率の良さ」の2つが揃わないと世の中は成立しない
- 両方のバランスが大事
- 「永遠の進歩」はありえない
考え方27 「効率」と「精神」のバランスをとる
- 2つの相反するものを無理矢理統一するのは危険
- 「これは相反するもの」「元々合わないもの」と理解し、受容するバランス感覚が必要
- 本文では、効率重視のビジネスマン思考と徳や悟りを重視する精神世界のバランスが重要と述べている
考え方28 効率を「量」ではなく「質」でとらえる
- 日本の生きる道は近代的な「量的効率」ではない
- 日本の生きる道は脱近代的な「質的効率」
- 企業活動で言うと、単純な大量生産ではなく高品質なものづくり
- 個人レベルでは、バリバリ稼ぐのでなく、余暇の楽しみやQoLを重視する生き方
- [MEMO]
- 2025年時点を考えると、概ね正しい論ではありそう
考え方29 「近代の終わり」を意識する
- 近代は大量生産・大量消費の「量的効率」を求めた時代
- そのような時代は終わった
- 次の時代は「質の効率化」という新パラダイムを持った脱近代/超近代
- 永遠の発展は終わった
- [MEMO]
- しかし、中国の発展はまさに量的効率による大量生産・大量消費
- インドなどもその流れになるだろう
- この本を執筆した当時は中国の発展を意識していなかったのではないか?
- そもそも質を高めるには量が必要になるので、量を無視して質を求めるのは浅慮に思える
- 老人にありがちな「我々はもう十分堪能したので発展はもう結構」という若い世代を無視した手前勝手な達観に見える
第4章 世の中を考える技術
考え方30 国単位ではなく「文明単位」で見る
- 世界を正確に捉えるには考え方の座標軸を国単位ではなく、文明単位にするべき
- 日本は国であると同時にひとつの文明
- 独自に立っているという精神が必要
考え方31 「どん底」から復活を考える
- TBW
考え方32 世と人とは元来「うまくいかない」もの
- 東西の思想の共通テーマ:
- あらゆる思想は「人間は世の中とどう折り合っていくか」について論じている
- 人間は人として正しい生き方を求めながら、それだけでは生き延びることができないという現実にぶつかるもの
- どの時代の思想もそのような問題を扱っている
- 社会と人間は元来上手くいかないもの・相容れないものであるという現実を前提に世の中を考えることが重要
- 大変な問題ほど答えは出ないものだというある種の諦念も大事
考え方33 評価ではなく「事実」だけを見る
- イギリスの階級社会について:
- TBW
- 民主主義や近代経済学の始まり:
- 下流階級民の上流階級の民に対する猜疑心や公正を求める要求から生まれた
- 上流階級の欺瞞や搾取を監視・糾弾する為にマグナカルタのような慣習法が成立した
- 評価ではなく事実を見る:
- イギリス人は権威による価値観の押し付けを拒絶する精神が根付いているので、歴史書を読んでも歴史家の評価は気にせず、客観的な事実に注目する
- [MEMO]
- 近年ではどうだろうか?
- イギリスの子供はイギリスがやってきた非道な振る舞いを知ってショックを受けると耳にするが
考え方34 「本分」を貫くことで社会貢献を考える
- 福沢諭吉の「痩せ我慢の説」:
- 福沢諭吉曰く、痩せ我慢をしてでも「独立自尊」の精神を保つ気概が重要であり、利があればそちらに転び、権力の強い者に媚びる振る舞いは論外であると
- 知識人や学者の本道であり、あるべき姿である
- 御用学者問題:
- 今の日本は政治家の御用聞きをする学者や評論家が多すぎる
- 福沢諭吉の「痩せ我慢の説」の精神が無い
- 竹中平蔵のように御用学者から政治家に転向し、私益をむさぼる恥知らずもいる
- 本分を貫くことこそ社会貢献:
- 学者に限らず、どのような職業に就く人間も自らの仕事・自らの本分を貫くことで十分社会貢献になる
- わざとらしいボランティアなど考える必要はない
考え方35 天下国家も「自分の問題」としてとらえる
- TBW
考え方36 国を知るには、まず「神話」を知ること
- 神話はその国の国民性の本質:
- ソ連のスパイであるゾルゲは日本人の思考の本質を理解する為に日本の神話を学んだ
- 結果として日本人の心理を巧みにつかみスパイとして功績を挙げた
- 神話はその国の国民の精神的支柱を理解するのに役立つ
- [MEMO]
- 近年では昔ながらの建国神話は知っている人が少ないような
- むしろリベラル思想があらたな共通観念として浸透しているように見える
考え方37 日欧のエリートを「同じ土俵」に置かない
- 日本にはエリートが生まれない:
- 日本人は人種的に同一性が高く、エリートが生まれる素地がない
- 欧米は征服民族がエリートとして国を治める形態が今なお続く
- [MEMO]
- 元は武士や貴族がエリート階級だったが、明治時代に解体してしまったわけだが
- 武士や貴族も「日本人」という感覚を持った同輩であり、別の民族に対する「外」の者という意識は無かったというなら、それはそう
考え方38 「政府」と「国民」の違いを知る
- 古代中国:
- 農民は北京の皇帝が何をしているか全く知らないし、興味もない
- 民衆は政治とは無関係に生きていた
- 現代アメリカ:
- 現代のアメリカも古代中国と同じく民衆は政治と無関係に生きている
- 政治の中心であるワシントンは「特殊な場所」であり、アメリカの一般的な民衆とは隔絶した存在
- アメリカという国を考える時に必要な事:
- ワシントンの政治とアメリカ社会一般、アメリカ人一般を区別して考える
- 国土が広く州ごとに独立性が高いのでアメリカの一般人はワシントンを意識する事が少ない
- 日本のマスコミは大統領やワシントンの動きを中心にアメリカを見るのでズレが生じやすい
考え方39 ふと浮かんだ「疑問」を封じ込めない
- 情報は歪められている可能性がある:
- 我々が得る情報は多くの人間の口を介したり、マスコミや情報機関から提供されるもの
- それらが発信する情報は歪められている可能性がある
- イラク戦争に関する反省:
- 当初はバグダット陥落後も混乱が続き、2-3年は戦闘が激化した後、徐々に落ち着き復興が始まると思っていた
- しかし、現実は全く違う様相を呈した
- 入ってくる情報に歪みがあった:
- ワシントンやニューヨークのメディアが伝える情報は楽観論一色だった
- 今にして思うとこの時点で情報操作が行われていた
- イスラム勢力が単なるゲリラ勢力だと誤認させる情報操作もあった
- 現実には様々な国から支援を受けた大規模な武装勢力だった
- アメリカのリソースを削ぎたい国が密かに支援しているという事もあった
- 悔やまれる事:
- アメリカがバグダットを占領した時、警察官や公務員を全員解雇し失業させた
- 太平洋戦争後の日本の占領政策がヒントだと言っていたのにやっている事が逆だった
- 国境を封鎖せずゲリラ勢力の出入りが実質自由になっていた
- これらの「ふと浮かんだ疑問」を深く考えず放置してしまった
- 後から考えるとこの素朴な疑問は本質を突いていた
- 結局、これらの問題は軍事的には重要な問題だが、政治的なアピールにはネガティブな印象を与えるので、意図的に無視されていた
- 結果、イラク戦争は泥沼化した
考え方40 誰も疑わない「美しい言葉」こそ疑ってみる
- 「美しい言葉」は思考停止を誘う:
- 字面を見ただけで「これは文句なしに正しい言葉」と不問に付されたまま議論が進んでしまう
- 例えば、「自由」「平等」「平和」「民主」などなど
- 無条件に信じられているような耳に心地よい綺麗な言葉は疑ってかかる習慣が必要
- 「美しい言葉」に警戒する:
- 一見美しい言葉に対して、常に警戒と疑問を持つことが自分の考える時の大切な心構え
- 「戦後」とは:
- 「自由」「平等」「平和」「民主」の4つの言葉が日本独自の解釈の下に独り歩きした時代
- 外来の異質なものを本当の意味を理解しないまま取り入れた結果、混乱を招いた・招いている時代
- 自由:
- 人や企業が自由である為には、自立した個人や組織であり、それなりの責任が伴うことが前提
- しかし、戦後民主主義を教えられた日本人は、自由の概念を「他人に迷惑を掛けなければ何をしてもよい」と捉えた
- 結果、援助交際が蔓延し法の隙間を掻い潜る経営者が跋扈している
- 重大な社会的モラルや責任を放棄した自由は本当の意味での自由ではない
- [MEMO]
- 自由と無秩序は違うと言いたいのだろうが、例に挙げたものは微妙な気がする
- 平等:
- かつては苦学生の救いの門だった国立大学が、今では親の経済力によって入学の成否が決まる
- 機会の平等が失われている
- 平和:
- 平和は好ましいが、一国だけの平和主義が成立しないことは自明の理
- 日本国憲法は平和憲法と謳われるが、その後に続いた国は皆無であることが現実を現している
- 民主:
- モラルが崩壊した社会が「戦後民主主義」の到達点だとすると、日本人は民主の意味を間違えたのではないか
考え方41 数字や論理の「正しさ」に惑わされない
- ディベート:
- 法廷のように二手に分かれて論点を分析・検討し、論証するスタイル
- 議論の場では数字や論理を駆使することで相手の反論を抑え、論戦に勝利することを目的とする
- 本当の意味で心から相手を納得させられるかは疑問(著者の意見)
- 数字の問題点:
- 数字は一番明確な論理で出来ている
- しかし、他の言葉と違って具体的なイメージがない
- したがって、人間の肌感覚で捉えにくい
- そのせいか、8-9割の人間は数字嫌いと言われる
- ディベートにおける数字:
- 論戦に勝つ為だけに都合のよい数字を並べ、肌感覚でわからない論理で煙に巻かれて説き伏せられてしまう
- ファジーな感覚は安全装置:
- 「理屈ではそうかもしれないが」という釈然としない感覚や腑に落ちない感覚は大事にするべき
- そのようなファジーな感覚は人間に備わった危機回避能力や安全装置なのかもしれない
考え方42 「先に結論ありき」の議論に注意する
- 結論ありきの議論:
- 最初から特定の結論があり、それをあたかも自由な討論の末に出てきた結論かのように見せかける議論
- 結論ありきの議論に注意せよ:
- 形だけの議論で参加者の考える機会を奪い、間違った方向へ誘導されていないか警戒することが重要
考え方43 「早く」見つけ、「遅く」行動する
- イギリス外交の特質:
- 「早く見つけ、遅く行動する」という考え方が基本になっている
- 情報を徹底的に重視している
- 早く見つけ、遅く行動するとは:
- 事態を早めに把握することができれば、その推移をじっくり観察することができる
- 行動するのに相応しい時期を見出すことの必要不可欠な条件
- イギリスの情報収集活動:
- 情報ルートの複線化:
- 外交官からの情報を重視しない姿勢
- 外交官はエリートで目立ちやすい
- エリート故に政治的立場や独自の利害関係に傾きがちというリスクもある
- イギリス情報収集機関は独自ネットワークとして市井の文化人を重視
- 情報のダブルチェック、トリプルチェックも重視
- 情報ルートの複線化:
- 遅く行動する=最適のタイミングで行動する:
- 最適のタイミングで行動することは最小限のコストで最大の収穫を得る道
- 「橋に辿り着くまでは橋を渡ろうとしてはいけない」(イギリスのことわざ)
- 最適のタイミングを待てる「強い神経」を養うことがエリートの心得
考え方44 「全員一致」は、まず間違いと心得る
- ユダヤ人の教え:
- 「全員一致したら、その決定は無効」
- 何かを決める際に全員一致の決定は無効にして最初から議論をやり直す
- 全員一致が起きるのは誰も真剣に考えていない証拠
- 民主主義における多数決:
- あくまで「やむを得ない暫定の妥協」
- 何故全員一致は危険か:
- 全体がひとつの意見に染まっているという事は、その意見や認識が誤っていた場合、全てが崩壊するリスクがある
- 多様な意見はセーフティネットになる
第6章 情報を考える技術
考え方45 変化を見るまえに「不変」を見る
- 歴史を重視して考えるとは:
- 何がどう変わったか、何がどう新しいかを考えるよりも「何が変わらないのか」を考えること
- 本当の創造性は「変わらないもの」を常に意識することから生まれる
- 「より大切なものを残すため」に変わる:
- すべてを破壊して新しいものだけで進むことは愚かな選択
- 破壊して新しいものを取り入れるだけでは発展・繁栄とは言えない
- 「変わらないもの」「残すべきもの」を見極める
考え方46 バラバラの「事実と数字」を見つめ直す
- ものごとの本質を見極めるには:
- 一見バラバラに見える事象を根気よく集積することが重要
- イギリスの外交:
- イギリスの外交には「これだ」という原理原則が明示されるものがない
- ものごとを性急にまとめて意味付けしたり、ひとつの軸や枠組みで提示したりせず、事実そのものを提示する
- Fact & figures(事実と数字)
- Fact至上主義
- 情報の扱い方:
- 事実や数字は他人の解釈やフィルタを通さない生情報である必要がある
- データの解釈は他人任せにせず自分でやるというこだわりが重要
考え方47 「自分の絵」にして精度を高める
- 「自分の絵」とは:
- 集めた情報から自分なりに解釈した全体像/真相/実態etc
- 要するに仮説
- 自分なりに仮説を立て、仮説の検証と修正を繰り返すことで精度を高めていく
考え方48 「目的意識」を明確にする
- 情報を集める時はコンセプトが重要:
- コンセプト = 目的意識
- そもそも何の為に? という戦略的な思考が大事
- イギリス型とフランス型:
- イギリス型: ピンポイントに的を絞った情報戦
- フランス型: 人海戦術であらゆる情報を収集した
- 結果: フランスは自分で集めた情報に溺れ、有効活用出来なかった
- 教訓:
- 情報収集を目的化してはいけない
- 何が重要な情報なのかを考え、コンセプトを決める
- [MEMO]
- 現代ではビッグデータ解析やAI分析もあるのでフランス型でもよいのでは
- 要するにマンパワーの問題なので
考え方49 チェックには「別の頭」を使う
- 先入観を持たない:
- 情報分析では先入観を持ってはいけない
- 真相/実情を知るには予断や先入観を排することが重要
- 予断や先入観を排する方法:
- 予断や先入観は情報分析のノイズ
- しかし、人間は予断や先入観を取り除くことが難しい
- 組織で情報分析をする場合は、情報収集担当と情報分析担当を別人に分けることで予断や先入観をできる限り取り除く
- 個人で情報分析をする場合は、意識的に「情報収集役」と「情報分析役」を切り替える(そのように己を訓練する)
考え方50 危機は、まず「人心の変化」に現れる
- 危機は人の心の中に現れる:
- 本当の危機はまず人の中に現れる
- それが形になって表出した結果が「出来事」
- 危機を読むには人の心の中に起きる変化を見る必要がある
考え方51 「予兆」を感じるアンテナを磨いておく
- 大きな変化には予兆がある:
- 大きな変化が起きる時、必ず先立って小さな変化(予兆)がある
- しかし、小さな変化なので見落とし/忘却されがちである
- 小さな変化を記憶し、大きな変化に備えることが重要である
考え方52 「30年以上先」は、現在の延長で考えない
- 投影史観:
- 未来を予測する際の考え方のひとつ
- 現在の状況から現在の延長線上に未来を予測する考え方
- しかし、現状の枠組みが基本的に変化せず、量的に推移するだけ、大きな変化はなく徐々に変化するはずという思い込みが前提になっている
- 長期予測では投影史観は役立たず:
- 30年を超える長期予測では投影史観で予測された未来予測はほとんど外れている
- そもそも国家とは何十年かに一度大きな変化が起きるもの
- 大きな変化が起きることは投影史観では考慮されないし、実際に大きな変化が起きると投影史観は役に立たなくなる
- 日本が戦後大きな変化に見舞われず過ごしてこれたのは例外的な状況だった
- [MEMO]
- バブル崩壊はかなり大きな変化だったが、あえて変化しない事を選んだように見える
考え方53 「日本人」を明確に意識する
- アイデンティティは重要:
- 「自分は何者であるか」を知り、自画像をはっきり持つことでものごとに効率的に対処できるようになる
- 「自分が何者であるか」という自己認識が精神の根幹を形成する
- ブレない「考え方の座標軸」を身に付けることが、ものごとの本質を見抜く考え方を養う