否定神学的思考法
否定神学
否定神学とは
主な特徴
- 否定表現によるアプローチ:
- 神の本質は人間の理性や言葉で捉えられるいかなる概念にも当てはまらない、一切の述語を超えたものであると考える
- そのため、「神は〜ではない」といった否定的な表現でのみ神について語ろうと試みる
- 肯定神学との対比:
- 「神は善である」「神は愛である」といった肯定表現で神を論じる肯定神学と対をなす二大潮流
- 神秘主義との関連:
- 神秘主義との関連が強く、神についての最高の認識は、人間的な知識や概念を超えた無知の自覚にある、という考え方につながる
否定神学的アプローチ
神学以外への応用
- 肯定的な言葉で物事を理解する試みは対象への認知を固定化してしまう恐れがある
- 肯定的な要素は物事の一部/表面的な見方であり、本質とは遠いものと考える
- 否定表現による語られていない、表面化していない物事の本質に着目する
- 否定を尽くすことで無駄なものが削ぎ落とされた本質に迫れるのではないかというアプローチ
例
- 戦略:
- 「何をやるか」よりも「何をやらないか」に着目する
- 何をやるか = 肯定表現
- 何をやらないか = 否定表現
- 否定表現によって集中するべき領域を限定し、真に集中するべき本質的な目標を明確にする
- キャリア/自己理解:
- 戦略と同じく「何をしたいか」ではなく「何をしたくないか」で自分にとって最適な道を模索する
- 「何をしたいか」を考えることは無限の欲求と向き合うことに等しい
- 人間の人生は無限の欲求を叶えるにはあまりにも短い
- 「何をしたくないか」を考えることで選択すべき選択肢が限定されていく
- 結果、自分にとって最適な道が現れる
- 情報分析/知性:
- 「語られていること」ではなく「語られていないこと」に着目する
- 肯定表現で語られる表面的な情報だけでなく、語られていない情報(意図的に伏せられている情報)や語り得ない情報に真実を見出す
べからず集に見られる否定神学的アプローチ
べからず集とは
- 工業/製造業などの分野で「これはしてはいけない(するべからず)」という禁忌/タブーの知見を集めた資料
- 禁止/制限する行為を明示することで安全性や生産性向上を目的とする
べからず集と否定神学的アプローチ
- 「○○をする」という積極的な肯定表現だけでは視野が狭くなりがち
- 「○○をしてはいけない」という否定表現を集めることで最低基準を揃えることが可能になる
- 安全管理や生産性は語り得ぬもの、語り尽くせぬものであり、肯定表現ではいくら言葉を尽くしても全てを語ることはできない
- 否定表現によって「○○ではないもの」を洗い出していくことで逆説的に安全性や生産性のあるべき姿を浮き彫りにしていくアプローチは否定神学に通ずるものがある