Backend For Frontend(BFF)
1. 目的
フロントエンド特化型のAPI提供
- 各クライアント(Web、モバイルアプリなど)の特性やニーズに最適化されたAPIを提供する
フロントエンドとバックエンドの疎結合化
- 汎用バックエンドサービスとフロントエンドの間に専用レイヤーを設けることで、相互の変更の影響を最小化する
開発効率の向上
- フロントエンドチームがバックエンドの一部をコントロールできるようにし、開発スピードを上げる
2. 課題
汎用APIの限界
- 複数の異なるクライアント(Web、iOS、Android)が同じAPIを使うと、すべてのクライアントのニーズを満たす汎用的なAPIになりがちで、どのクライアントにとっても最適ではなくなる
- Webブラウザとモバイルアプリでは通信環境、画面サイズ、処理能力が異なるため、必要なデータ量や形式が違う
オーバーフェッチング・アンダーフェッチング
- 汎用APIでは必要以上のデータを取得してしまう(オーバーフェッチング)、または複数回のリクエストが必要になる(アンダーフェッチング)問題が発生しやすい
チーム間の依存関係
- フロントエンドチームがAPI変更のたびにバックエンドチームに依頼する必要があり、開発速度が低下する
- バックエンドチームは複数のフロントエンドチームからの要求を調整する必要があり、ボトルネックになりやすい
レガシーシステムとの統合
- 既存の複雑なバックエンドシステムをフロントエンドから直接扱うのが困難
3. 解決策
フロントエンド専用のバックエンド層を設ける
[Webアプリ] → [Web BFF] ┐
[iOSアプリ] → [iOS BFF] ├→ [マイクロサービス群]
[Androidアプリ] → [Android BFF] ┘
BFFの役割
- データ集約: 複数のバックエンドサービスからデータを取得し、フロントエンドに最適な形式に整形
- データ変換: バックエンドの複雑なデータモデルを、フロントエンドが扱いやすいシンプルな形式に変換
- 認証・認可: セキュリティ処理を一元化
- キャッシング: フロントエンドのニーズに合わせたキャッシング戦略を実装
- エラーハンドリング: バックエンドエラーをフロントエンドに適した形式で返す
所有権の明確化
- 各BFFは対応するフロントエンドチームが所有・管理することで、自律的な開発を可能にする
4. メリット
パフォーマンスの最適化
- 各クライアントに必要なデータのみを、最適な粒度で提供できる
- モバイルアプリではペイロードサイズを削減し、通信量を抑えられる
- 複数のバックエンド呼び出しを1つのBFF呼び出しにまとめ、ラウンドトリップを削減できる
開発速度の向上
- フロントエンドチームがBFFを管理することで、バックエンドチームへの依頼なしに変更できる
- フロントエンドの要件変更に迅速に対応可能
ユーザー体験の向上
- デバイスや通信環境の特性に合わせた最適化が可能
- 例: モバイルでは低解像度画像、Webでは高解像度画像を返す
バックエンドの保護
- 汎用バックエンドサービスを複雑化させずに済む
- BFFがバックエンドの複雑性を隠蔽し、フロントエンドはシンプルなインターフェースで済む
技術スタックの柔軟性
- 各BFFで異なる技術スタックを選択できる(Node.js、Go、Python など)
- フロントエンドチームが得意な言語で実装可能
5. デメリット
コードの重複
- 複数のBFF間で似たようなロジック(認証、ログ処理など)が重複しやすい
- 共通機能の抽出とメンテナンスが課題になる
システムの複雑性増加
- 新しいレイヤーが追加されることで、全体のアーキテクチャが複雑になる
- デプロイ、監視、デバッグの対象が増える
運用コストの増加
- 管理するサービスの数が増え、インフラコストや運用負荷が増加する
- 各BFFのデプロイ、監視、ログ管理が必要
チーム間の調整が必要
- BFFと共通バックエンド間のインターフェース設計には、チーム間の協力が必要
- データモデルやAPIの変更時に影響範囲の調整が発生する
パフォーマンスのボトルネックになる可能性
- BFFがすべてのリクエストを仲介するため、BFF自体がボトルネックになる可能性がある
- 適切なスケーリング戦略が必要
過剰設計のリスク
- 小規模なアプリケーションや単一フロントエンドの場合、BFFの導入はオーバーエンジニアリングになる可能性がある
6. 注意事項
BFFの責任範囲を明確にする
- BFFはあくまで「フロントエンドのための」バックエンドであり、ビジネスロジックは共通バックエンドに置くべき
- BFFにビジネスロジックを実装すると、複数のBFF間でロジックが重複し、保守性が低下する
共通機能の扱い
- 認証、ログ、監視などの共通機能は、ライブラリやサイドカーパターンなどで共通化を検討する
- すべてを各BFFで独自実装すると、保守コストが膨大になる
API設計の一貫性
- 各BFFが独自のAPI設計をすると、全体の一貫性が失われる
- 組織全体でのAPI設計ガイドラインやスタイルガイドの策定が重要
セキュリティ
- BFFは外部に公開されるため、セキュリティ対策が重要
- 認証・認可、入力検証、レート制限などを適切に実装する
モニタリングとロギング
- BFFが追加されることで、問題の特定が難しくなる可能性がある
- 分散トレーシング(Jaeger、Zipkinなど)の導入を検討する
- 適切なメトリクスとアラートの設定が必要
スケーリング戦略
- BFFのスケーリングニーズは、対応するフロントエンドのトラフィックパターンに依存する
- 各BFFを独立してスケールできるようにする
GraphQLとの比較検討
- GraphQLもBFFと似た課題を解決する技術
- 要件によってはBFFよりもGraphQLの方が適している場合もある
- 両者の組み合わせも検討の価値がある(BFFでGraphQLを提供するなど)
段階的な導入
- いきなりすべてのフロントエンドにBFFを導入するのではなく、最もメリットが大きいところから段階的に導入する
- 小さく始めて、効果を検証しながら拡大する